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急性虫垂炎とは
急性虫垂炎は炎症が比較的早く進行して悪化する病気です。発見が遅れることもよくみられ、気付いた時には重症状態になる場合もありますので格段の注意が必要です。
急性虫垂炎の原因
虫垂内の圧力が上昇して逃げ場を失うと、虫垂へ送られる血流が障害を受けて、虫垂部にある粘膜層と呼ばれる場所に十分な血液が届かなくなり細菌感染を引き起こしやすくなることで虫垂炎が発症することに繋がります。
硬い便は通称で糞石(ふんせき)とも呼ばれ、この糞石により虫垂内部が閉じ込められることが、虫垂炎の原因とも考えられており (1)、この糞石成分は食物繊維が少ない食生活が関与して形成されると考えられています。
また、子どもにおいても、虫垂炎は手術を必要とする疾患の中で最も多い疾患であるとされ、その原因の一つは主に虫垂内部が閉塞して起こる虫垂のみの変化によって起こるもの、そしてもう一つの原因として周囲の腸炎に続いて二次性に発症するものが考えられています。(2)
急性虫垂炎の症状
一般的に、虫垂炎の症状は時間経過に応じて変化するという特徴があります。
急性虫垂炎の代表的な症状は、胃痛やへその周りの痛みに続いて起こる短時間の悪心嘔吐や食欲不振が有名であり、痛みそのものが、たんや動作で悪化することが知られています。
炎症がさらに悪化すると、虫垂の壁の外部にも強い炎症が広がって、腹部症状が重症化して腹膜炎と呼ばれる状態に進行してしまい緊急的な処置が必要になります。
腸管に穴が開いてしまう事を意味する穿孔を起こさない虫垂炎の場合でも、特に高齢者においては急速な経過を経て敗血症性ショックなどの重症な状態に進展することがあるので注意する必要があると考えられています。(3)
急性虫垂炎の検査・治療方法
急性虫垂炎を診断する為には、主に臨床的な評価、あるいは腹部CT検査や超音波検査などの画像結果に基づいて判断することになります。
臨床的に医師が実践する、一般的な腹部触診においては、右下腹部を押さえた際に患者さんが痛みを感じて、炎症が周囲に広がり腹膜に及ぶと反跳痛と呼ばれる徴候が認められるようになります。
また検査における特徴としては、白血球数が概ね12,000~15,000/μLという具合に白血球増多という変化がみられます。
画像診断ツールとしての造影CT検査は虫垂炎の診断として精度が高く、急性腹症をきたす虫垂炎以外の他の原因も明らかにできるので有用です。
また、腹部超音波検査そのものは迅速に施行できるうえに放射線曝露の心配が必要ありませんが、まれに腸管ガスが多い場合には腹腔内臓器の描出がされにくく診断能として限界があることを認識しておきましょう。万が一にも虫垂炎を発症した際の治療方法としては、抗生剤を使用して虫垂の炎症を抑える保存的な療法、あるいは根本的に虫垂切除処置を実施する手術治療のふたつが大きく推奨されます。
近年では虫垂炎に対する治療の選択肢は広がっており、膿瘍や穿孔を伴わない急性虫垂炎の治療においては手術治療に対して保存治療の治療成績は劣らないという趣旨の報告が散見されています4)。
多くの症例では保存的治療で症状が改善することが認められますが、実際に治療を行う担当医から個々の炎症状態、保存治療の適応があるか、手術治療の必要性などを十分に確認したうえで治療法を選択するように心がけてください。
手術適応に関しては現代でもさまざまな議論がなされているところであり各医療施設での方針判断決定に委ねられていますが、わが国での大規模臨床研究はなく国外の臨床研究でも一定の見解が得られていないのが現状です。(5)
治療後の注意点
虫垂炎の治療をして軽快し、退院後の外来受診で、手術創部に問題がないと判断された際には、術前と同じように運動しても大きな問題はなく、段階的に運動強度を徐々にアップしていくことをおすすめします。
急性虫垂炎の予防法はある?
便秘の改善をしましょう
虫垂炎は便の塊などが虫垂周囲を塞ぎ、細菌感染することによって発症する恐れがあると考えられています。普段から便秘を改善して食物繊維の多い食事メニューを摂取して栄養バランスの取れた食生活を心掛けるように意識しましょうね。
整腸作用のある食事をとりましょう
便秘がひどい場合には通常よりも虫垂部が圧迫されて、壊死や炎症を起こしやすいと考えられますので、日常的にヨーグルトや納豆など腸内環境を調整して整腸作用を有する食事を積極的に食べることによって便秘症にならないように注意しましょう。
規則正しい生活を送りましょう
日常生活の不摂生そのものによって体力が消耗して細菌やウイルス感染に発展する場合も十分ありうることから、常日頃から規則正しい生活習慣スタイルを送ることが虫垂炎にならないための予防策のひとつと思われます。
急性虫垂炎と間違えやすい病気
急性虫垂炎と類似した症状を呈して、一般的に間違えやすい疾患としては大腸憩室炎、尿路結石、腸炎、卵巣捻転を含む婦人科疾患などが挙げられます。急性虫垂炎の症状は放置すれば自然に良くなることはなく悪化することが多いですので、腹部の痛みが右下腹部へ移動するようであればできるだけ早く病院を受診するように心がけましょうね。
急性虫垂炎に関するQ&A
急性虫垂炎は、男女関係なく子どもから成人および高齢者に至るまで幅広い年齢層で発症すると言われており、特に10〜20代頃での発症が疫学的に多いとされています。
誰しもが心配で不安になる急性虫垂炎に関する素朴な疑問や知りたい質問にお答えします。
まとめ
急性虫垂炎は、腸の入り口である盲腸から垂れ下がっている虫垂という部分の炎症によって起こります。
虫垂炎は、糞石などによって虫垂内部の閉塞が発生の原因であると考えられています。急性虫垂炎における治療としては抗菌薬による保存的治療、あるいは腹部に長い切開を加えて行う開腹下手術または腹腔鏡を用いる虫垂切除術を実行されることが一般的です。
虫垂炎を発症してから1日~2日以内に炎症を起こした虫垂が破裂する、あるいは膿瘍を形成して重症化するリスクがあるため、万が一にも夜間に症状発現した際には遠慮なく救急車を呼ぶことも視野に入れてくださいね。
今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。
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